属人的すぎる業界を、AIと人の掛け算で変える。
広告・マーケティング業界は、いまも人の力技に大きく依存している。大企業の中でその構造の壁に突き当たった高津康裕は、判断の主導権を自分で握り、挑戦を実現するために株式会社ポジドリを創業した。彼はこれからAIと人の掛け算で業界を変えようとしている。そんな彼がいま何を見据え、どんな壁の前に立っているのかに迫った。
- 取材日
- 2026年8月7日
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- Kijika編集
高津 康裕(たかつ・やすひろ)
株式会社ポジドリ 代表取締役社長/CEO
約十三年間、広告・マーケティング領域の大企業でキャリアを積んだのち、株式会社ポジドリを創業。マーケティング支援事業、事業成長支援事業、エンターテイメント支援事業の三つを展開。現在は、インタビュー記事制作を効率化する自社AXソリューション「Kijika」の開発を推進している。
AIと人の掛け算で、いま私たちが対峙しているもの
株式会社ポジドリ、代表取締役社長/CEO。高津康裕は、自社の現在地をこう説明する。
ポジドリでは、いまどのような事業をされていますか。
「マーケティング支援事業、事業成長支援事業、エンターテイメント支援事業の三つを展開しています。ブランディングや事業コンサル、マーケティング戦略といった上流領域と、構想を形にする実装領域の二軸を武器に、絵に描いた餅にしない価値創造を行ってます。」
代表として、いま最も実現したいミッションは何ですか。
「AIが加速していく時代の中で、人的なハンズオン支援で顧客の売上成長につながる支援と、業務効率を高めるAIソリューションの提供。この二つを推進することに力を入れていきたいです。」
なぜ、その二軸を同時に進める必要があると考えるのでしょうか。
「人的な支援のみでは限界があると思っています。AIのソリューションと人の支援を掛け算することで、顧客の事業成果やマーケティング成果の最大化につながっていくと考えているからです。」
効率化か、伴走か。高津にとってそれは二者択一ではない。両方を同時に握らなければ顧客の成長には届かないという確信が、この会社の輪郭をつくっている。上流の構想だけでも、実装だけでも足りない。その判断が、事業の並べ方に表れている。
ポジドリを創業するに至った、原点となる衝動は何でしたか。
「広告業界が市場として成熟している中で、変化を作りにくくなっていた。大企業に勤めていると変化を起こしにくかったという背景があります。」
成熟した市場と、大企業という組織。動かしにくさが二重に重なる場所に、高津は立っていた。
属人的すぎる業界への、消すことのできない違和感
変化を起こしにくかった。その言葉の中身は、いくつもの具体的な制約でできている。
大企業の中で、特にどんな壁が変化を起こしにくくしていたのでしょうか。
「チャレンジをするにあたって、いろいろな制約がありました。AIの活用であっても、このプラットフォームは使ってはいけないであったり、投資に対して消極的であったり。そういうところが障壁でした。」
具体的には、どんな挑戦を断念せざるを得なかったのでしょうか。
「大きくは、新規事業などに投資をしていく判断に、上層部から中々イエスをもらえなかったということです。なので、自分で主導権を握り、事業推進できるようになりたいと思うようになりました。」
変えたい対象よりも、変えられない構造のほうが先に見えていた。
その制約を離れ、自ら創業して実現したかったことは何でしたか。
「自分でマネタイズしつつ、どこに投資をしていくかの判断を自分で見極める。ポテンシャルがあるところを見つけ出し、遂行していくことを考えていました。」
いまの広告・マーケティング業界で、特に変えるべきだと感じる課題は何ですか。
「すごく属人的である業界です。属人性が必要なときもあると思うんですけど、仕組みで解決できることも、AIが出てきたことで増えてきました。なので、AIと人的支援の掛け算が必要だと思っています。」
創業は、業界への批評ではない。判断そのものを自分の手に取り戻すための行動だった。属人性そのものを否定しているわけでもない。問題は、仕組みで解けるようになったものまで人の力技に頼り続けていることだ。
描いた未来を手繰り寄せるための、最初に選んだ一手
業界がどう変わるべきか。その問いに、高津は実装領域から答えを始めた。
五年後、十年後、業界はどう変わるべきだと考えますか。
「特に実装領域において、なるべくAIに託すことで効率化し、コストを安く遂行することにシフトする。その分浮いた人的リソースを、新しい事業のチャレンジに投下すべきだと考えています。」
ここでいうクオリティとは、何の質を指していますか。
「業務の中で汎用的に解決できること。そしてクオリティというのは、マーケティング課題に応えていくためのソリューションだったり、アイディアのクオリティを指しています。」
効率化の話に見えて、語られているのは質の話だ。AIに渡すのは手数であって、判断ではない。空いた時間で何を考えるかが、そのまま成果の差になる。
その未来のために、いま最も注力している取り組みを教えてください。
「主に『Kijika』というプロダクトの開発です。広報や人事が社内でインタビュー記事を作成する際のコストを大きく削減し、コスト効率を高めるためのソリューションです。原点としては、ポジドリの社員のアイディアが起点となっています。」
他社とは異なる、ポジドリだからこそ提示できる強みは何でしょうか。
「顧客の課題を点で捉えるのではなく、その背景をしっかり理解し、何が一番最短ルートで適切な解なのかを考えていくようにしています。」
描いた未来を口先で終わらせないための一手がKijikaであり、それを支えているのは課題の背景まで降りて最短の解を出す姿勢だ。
『憶測でしか語れていなかった』と気づいた壁と挑戦
ここまでは構想と勝ち筋の話。しかし、彼は進む中で壁に直面していた。
いまの挑戦で、最も前に進みにくいことは何ですか。
「今進めている新規事業において、過去にプロダクト開発をゼロから立ち上げたことがなかったため、その推進方法や思考フローが、まだまだ足りてないんです。今はいろんな方に助言をいただきながら勉強しています。」
三つの事業を率いる代表が、最初に差し出したのは自分の未熟さだった。構想は語れる。しかし、それを形にする手順は語れない。認めにくい種類の差である。
プロダクト開発で、特に難しいと感じるのはどの段階ですか。
「どういう要件定義にするかというところに対して、憶測でしか語れていなかったところです。正直、まだまだ自分が気付けてないところがたくさんあるな、と。ここで開発を進めてしまったら、それが無駄になる可能性があると気づいていたので。要件定義に必要なリサーチや機能が分かっていなかった。それが辛かったですし、突破しなければならない課題だと感じました。」
その困難や課題を、どう突破しようとしていますか。
「具体的なことは今後検討ですが、明確に必要なアクションとしては、多くのケースを“知る”ことだと思っています。まずは相談候補となる取引先を探し、アプローチリストを作る。そこから商談を通して導入いただき、どういう業務フローやペインがあるかを仮説を持って調査し、要件定義の過不足を見極めていきたいです。」
壁の中身は、構想の甘さではなく自分の知識の不足だった。それを認めた上で、次の一手を知ることから始めると決めている。突破劇は、まだ始まったばかりだ。
便利の先にある『豊かさ』を、人の手で生み出していく
壁は現在地の話でしかない。高津が見ているのは、その先にある最終像だ。
最終的に、どのような存在になりたいですか。
「企業や人が、自分たちのパフォーマンスを最大化していくための支援や価値創造をポジドリが行っていく。そういう存在でありたいと思っております。」
その原体験は何ですか。
「やっぱり、お客様の笑顔であったり、何か一緒に達成したときの喜び。これを広告の仕事で感じられたことが原点で、それを時代が変わる中でどう増やしていけるかを考えています。」
効率化できるところは徹底的に効率化する。それは目的ではなく、人にしかできないことに向き合うための手段だ。原体験が数字ではなく人の表情に置かれている点に、優先順位が出ている。
未来の仲間へ、メッセージをお願いします。
「サービスがコモディティ化しているこの時代において、人間が生み出していくことは何か。これを一緒に考えていきたいなと思っております。今まで無駄だった作業、複雑だった作業、汎用的にできる作業。こういうものは全てAIに任せ、より良い未来を一緒にリードできる存在になりたいです。」
AIでは代替できない、人が担うべき仕事は何だと考えますか。
「そこは今も考えているところなんですけれども、やっぱり人の暮らしを豊かにしていくこと。人が幸せだと感じる産業を生み出せることがゴールだと思っております。便利になるだけの世の中では足りない。その先に、人が本質的に幸せだと感じるものを提供できるといいなと思っております。」
便利は通過点にすぎない。その先に何を置くのかを問い続けるのが高津康裕だ。そんな彼がいま、ポジドリの舵を握っている。
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